現代の桃源郷!? 渡鹿野島という日本唯一の風俗島に行った話 【中編】

現代の桃源郷!? 渡鹿野島という日本唯一の風俗島に行った話 【中編】

以前書いた記事(現代の桃源郷⁉ 渡鹿野島という日本唯一の風俗島に行った話【前編】)の続編。未読の方はぜひともそちらもご覧いただきたい。ちなみに本記事は全編ノンタイアップなので、真実を在りのままに伝えていることをここに宣言する。大阪熊から勧められ、好きモノ運転手に誘導された渡鹿野島への渡航もついに終点。出会い頭に船頭からのパラダイス宣言をされた俺の運命や如何に……。では見届けて欲しい、渡鹿野島の様相を。

−−−渡鹿野島

「兄ちゃん、島に行きたいのかい? 乗りな。楽園に連れってってやるよ。」

……およそ初対面の相手に贈る言葉らしからぬワードに、何と言われたのかすぐには理解できなかったが、どうやら俺は楽園へ向かっていたらしい。気が付けば意気揚々と船に乗り込み、身体と心を揺らしていた。自分が向かっている先がパラダイス宣言されると、人間誰しも期待してしまうというものだ。先ほどまで頬を伝っていた冷や汗も引き、爽やかな潮風に快適さすら覚えていた(単純)。気分が良いので船頭へジャブ的な質問を投げかける俺。

「あの、おじさん。一日にどのくらい島を往復されてらっしゃるんですか?」

「ん? 今日はこれが初だぞ?」

おやおや、そうなのか。まぁ、そんなもんなのか。てっきりバス的な感じで定期的に運行しているのだと思っていた俺は、タイミングが良かったんだなとホッとした。

「島から見てたら、お前さんが渡りたそうな表情で旗の下で待ってたから迎えに来たんだよ。」

前言撤回。どんやら監視されていたらしい。え、いつから? しかも表情まで把握されるって結構な倍率の望遠鏡か何かで見られていたのか? ホッとするのは早合点だったかもしれない。

「な、るほど。ありがとう……ございます。」

無意識にちょっと言い淀んだ。

「俺みたいな島の中年はなぁ、暇な時は漁に出てるんだよ。で、お前さんみたいに島に渡りたそうな人が来たら暇な奴が迎えに来るってワケさ。今の俺みたいに。兄ちゃんは運が良い。俺は安全運転だからな。」

なるほど、確かに船酔いの予兆は全く感じない。どうやら運が良かったのは本当らしい。

こんな感じで当たり障りのない会話を2・3回交わしていたらあっという間に到着した。時間にすると数分というところだろう。まぁ、普通に本土から見える距離だったしな。

「⦅あー……俺だ。今……さっきの兄ちゃん………あぁ…たぶん大丈夫だ……宜しく……⦆」

船頭がトランシーバーで小声で話してるのを耳を凝らして聴いている俺。「大丈夫」って……警察関係者じゃないって判断されたってことかな……? 一体何で判断してるのかは謎だが、覆面私服警察官とかも判別できるのかな。相当な目利き技術である。いや、もう考えるのは止そう。俺は、いよいよ辿り着いたんだ。ここでタイミングよく船頭からも声が発せられる。

「兄ちゃん、お待たせ。ようこそ渡鹿野島へ。」

−−−散策

ついに辿り着いた俺は船頭へのお礼も程々に、さっそく島を見て廻ることにした。なんせこの時点で時刻はまだ15時位、情事に走るには少々早い。これだけ秘境扱いされている島だ、観光しない手はない。

実は船頭との去り際に少し見どころを聞いておいた。船頭曰く「島の外周を東の方に歩いていけば、ビーチがある。」とのこと。まずは言う通りに行ってみようじゃないか。

歩くこと数分。なるほど、船頭の言った通り白い砂浜が見えてきた。でも誰もいない。ビックリするくらい誰もいない。奥の方に良い感じのホテルが見えるが、宿泊客がいないんだろうか、閑散としたビーチにはどこか寂しさを感じる。まぁ、それもそうだろう……ド平日だしな。きっと人がいる時は江の島みたいになるんだろう(希望的感想)。奥の方に森があり、奥に道が続いているが、ここから先に進んだら戻ってこれない気がする(そのくらい人気がない)。怖い。幸先が悪いかもしれないがこれはこの島に足を踏み入れた人にしか共感を得ないと思う。気になった方は性春十八きっぷで是非。

海岸線での散策を早々にリタイアした俺は港に戻り、違う道を行くことにした。ちなみに、この時点で渡鹿野島の簡単なMAPが分かってきたのでこの記事を読んでいる人にも簡単に説明しよう。

まず港があり、港の周辺には割と大きなホテルが乱立している(大体78階建てくらいかな?)。そしてホテル周辺には飲み屋……と、いうよりもスナックが軒を連ねている。完全に観光客からお金を取るための街造りが行われているってワケだろう。飲み屋街の裏手にはマンションやら戸建ての民家やらが軒を連ねているって感じで、その裏手には林(っていうか森?)がひたすらに拡がっている。たぶんこんな感じ。

さて、大まかな説明も済んだところで散策に戻ろう。ビーチを後にした俺は果敢にも裏手の林の方へ向かっていった。どうやらこの道を進んだ先に入り江ような場所があるらしい。うむ、率直に道中の印象を述べよう。めちゃくちゃ怖い。リゾート開発時の名残なのか、ゆるキャラを模した遊具のような物がその辺りに散在してる。あ、コレあれだ、中国の遊園地にあると聞くピカチ○とか名探偵コナ○の偽物みたいな、謎のキャラの遊具。微妙な違和感から来る恐怖が俺の脳内シナプスを駆け巡る。しかも林の中にも点々とあるからとても恐ろしい。

なんてことを考えながら視線をふと先に伸ばすと野山へと続く上り坂に、この島に上陸して初めて島民の姿を発見した。

「(第一村人発見じゃーい!)」

船頭を除けば初めてのホモサピエンスに出会い、心の内で歓喜したのも束の間。何やら様子がおかしい。というのも、俺の眼に飛び込んできたのは坂道の途中で俯きながら直立している老人だったからだ。

「(え⁉ なにこれ老人のマネキン⁉)

そう思うほどに微動だにしないその様子は『ゼルダの伝説』に出てきたリーデッド”そのもの。睨まれた時のリンクさながら、硬直して動けなくなった俺はしばしの間この老人を注視(なかば不可抗力)した。そして気づく。

「(あ、よく見たら直立不動じゃない。微妙に動いてる……毎分50㎝くらいで。)」。

そう、中々なホラー。すり足よりもちょっと遅いくらいの速度でジッと凝視すると微妙に動いている感じ。ちょっと背筋に寒気がしたのだが、普段ホラー映画を見ることが趣味の俺、声をかけたりせずに気づかないフリして進む。こういうのは気づいてないフリをするのが一番。てか小一時間ほど歩いてるのに出会ったのが死にかけのジジイ一人だけというのはこの島の未来を心配せざるを得ない。ふむ、まぁ、陽も陰ってきたことだし。この老人の顔を覗き込むといった無粋なことはせずに先を急ぐことにした。

−−−母なる入り江

林をひたすらに歩くこと10数弱。進行方向から水音が聴こえてきた。木々が生い茂る獣道を抜けると、そこには静かな湖畔のような船着き場があった。

本当に海水なのだろうかと疑ってしまうほど、奥まった地形で湖のようなロケーション。そして、夕暮れ時ということもあって中々にノスタルジックな趣がある。耳に流れてくるのは潮騒の音、オレンジ色に輝く水面は、この瞬間だけ時が止まったかのような錯覚さえも起こさせる。心なしか俺の汚れた心が洗浄され磨かれているような気さえしてくる。

「こんなに穏やかな気持ちになれるんだったら、この島に来た甲斐もあったなぁ。」

思わずタメ息とともに漏れる本音ツイート。渡鹿野島に対して多少なりとも感じていた恐怖が払拭されていくのを感じる。

いやいや、待て待て待て、何をこの状況で心を休ませているんだ。いや、心を休ませるのは良いんだ。だがそろそろ当初の目的を達成しに行こうじゃないか。そう、俺はここに息をヌキに来たワケではない。不覚にも母なる海を眺めていて大義名分を思い出した。ありがとう、マザー。

心穏やかになる景色に寂しさを覚えつつも港周辺の繁華街へと来た道を戻る俺。Googleマップを見る限り、島にはまだまだ未踏スポットがあるので踏破したくなるが、今回は心を鬼にしてメインミッションに戻ろう。

よ~し、ズッポシ行きますか。」

思わず心の声が漏れる。しかし、あることに気付いた。

「あれ、この島って案内所的な場所あるのかな……??」

これだけ人がいない島だ。イケないお店に行く方法が全く分からない。というか、イケないお店がどこにあるのか分からない。どうすればいいんだろう……。えっと……取り敢えず、帰り道のリーデッドをシカトしてやり過して、ビジネスホテル裏の飲み屋通りに向かうことにしよう。

ということでお待たせ致しました。いよいよ本丸。ここからは俺が体験した渡鹿野島の風俗事情に言及していくことにする。

−−−斡旋

飲み屋街に戻ったは良いものの。俺は途方に暮れていた。時刻は18時未明、そう、まだ飲み屋が開く時間じゃないのだ。人っ子一人いないゴーストストリートを当て所なく彷徨うしかない。これがRPGだったら野良モンスターを狩ってレベル上げに勤しむところだが、倒す敵の姿すら存在しない。

さて、どうしようかな。というか、この通りに戻ってきてから感じているんだが……何やらすごく視線を感じる。鬱蒼としたホテル群からだろうか……頭上に目をやるが、窓の数が多すぎて何処から視線を感じるのか発生源は分からない。脳裏では島に着いた時に船頭さんがトランシーバーで誰かと話していた姿が再生されている。危険信号を発する脳。だが、ここで状況を打破する声が聞こえた。

「お兄ちゃん~。」

突如聴こえた声にビクッと身体が反応する。

「ここ~、ここ~。」

声の出所に目をやるとCLOSEの看板が掛けられたスナックから老婆が顔を半分ほど出して手招きしている。取り敢えずは霊障の類ではないことにはホッとしたが、『本当にあった怖い話』レベルで鋭角な死角からアプローチされたのでまだ動悸が止まらない。そんな俺の様子を慮ってか優しく声を掛けてくる謎の老婆。

「怖がらないで~。いいからちょっと寄って行きなさい。お茶、淹れてあげるから~。」

「(いややっぱり怖ぇだろ……)」

なに? この島の住人は一年中ハロウィンしなきゃ死ぬ病なのか? そもそも何で顔半分しか出してないんだよ……。ちょっと優しい口調なのがまた恐怖レベル上げてるし。お茶くらいでその明かりの着いてない店内に誘われるほど俺の心は弱ってはいないぞ。ふむ、取り敢えず無視して進むのが賢明とみた。よーし、決めた。無視だ無視。女の子を探すんだ俺は。

「女の子も、紹介するよ~。」

「あ、お邪魔します。」

≪To Be Continued≫

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